vol.5
江戸時代から続く伝統的な「江戸からかみ」を壁紙に!

日本の壁紙は何から始まったか、知っていますか?
時は室町時代。書院造りという住宅様式が確立され、襖や壁に紙を張るようになったのが始まりといわれています。その紙が「からかみ」と呼ばれるもの。漢字で「唐紙」と書くように、中国から伝わった模様のある紋唐紙を手本にして、和紙に模様を刷ったもので、平安時代にはすでに国産されていたそうです。その後、からかみは各地に広まったものの、現在残っているのは、発祥の地である京都の「京からかみ」と、江戸で作られる「江戸からかみ」のみ。その江戸からかみを日本で唯一取り扱う問屋、東京松屋のショールームを訪ねてみました。

東京松屋があるのは上野駅の東側。仏壇・仏具の専門店が軒を連ねる問屋街、通称“仏壇通り”の一角でガラス張りのビルが近代的な佇まいを見せています。創業は元禄3(1690)年という老舗。社長の伴利兵衛氏が迎えてくれました。
「私たちは何百年前に日本の室内に張られていたものと同じ伝統的な和紙を作って売っています。日本家屋のいいところを残していきたいという思いで、一時は途絶えそうになっていた江戸からかみを、30年かけて復興させました」
国の伝統工芸品にも指定されている江戸からかみとは、どんなものなのか。商品開発部の伴直道さんにショールームを案内してもらうことに。1〜4Fからなるショールームのうち、お目当ての江戸からかみは2・3Fにたくさん展示されていました。まず、はるか昔に誕生したというのに、意外なほどカラフルで様々な模様があることに驚かされます。
「江戸からかみは、技法の違いによって3種類に分けられます。ひとつは、『唐紙師』と呼ばれる職人が和紙に版木の模様を手で刷る『木版手摺り』。それが主流ですが、ほかに伊勢型紙を用いて模様を刷る『更紗師』、金銀箔の平押しや砂子(金銀箔の粉)を和紙の上にまく『砂子師』の技法も用いられます」

江戸時代〜幕末の版木

復刻した大判の版木

木版手摺りの江戸からかみ

京からかみが公家や茶人に好まれる模様が多いのに対し、江戸からかみは町人好み。庶民文化が発展した江戸では、おおらかでダイナミックな構図の柄が多く見られるそうです。
木版手摺りで使用される版木の中には、江戸時代末期から幕末に作られた貴重なものも!
「江戸は火事が多かったため、版木が度々焼失し、さらに関東大震災、東京大空襲で焼けてしまい、残っているのはごくわずか。昔の版木は現在の半分以下のサイズなので、刷るのに手間も技術も必要ですが、後世に受け継いでいくため、現在も現役で使っています」

型紙(上)と刷り上がり(下)

多色刷りの過程


「一方、火事の多い江戸で独自に発展したのが、更紗師による型紙を使った技法。型紙の方が持ち出しやすく、井戸や土の中に埋めることで戦災を逃れたそうです。複数枚の型紙を使って多色刷りできるのが特徴で、同じ模様でも色の組み合わせによって全然違う雰囲気になるんですよ」
順に色を重ねていく過程をわかりやすくつなげたものを見せてくれました。細かな模様からは少しでもずれたら命取りの緻密な作業がうかがえます。江戸時代の大名行列が描かれているようですが、ゆるい雰囲気の絵は今見てもかわいらしいです。

金銀砂子手撒き


渋型の多色刷りと砂子手撒きの組合わせ

一段ときらびやかなのが、砂子師の技法による作品。金銀がギラギラしているのではなく、見る角度や距離によって控えめに輝きを放つ、気品のある美しさです。様々な大きさの金銀箔を撒いて模様を作り上げるーー。そこには並外れたセンスと技術力が求められることでしょう。

実際に江戸からかみを張った部屋が見られるというので、案内してもらいました。ショールームが入っているビルの上層部は、東京松屋が内装を手掛けた集合住宅になっているのです。
「和室の良さを今日の暮らしに活かせるよう、どの部屋も和室を取り入れた間取りにしてあります。窓には明かり障子を取り入れ、壁や襖、障子といった装飾はすべて和紙で仕上げました」
…と聞いていたものの、部屋に入ってみると、とてもモダンでおしゃれな雰囲気です。
「襖に張っている江戸からかみは昔ながらの伝統的な柄なのですが、色を工夫すれば現代の部屋にも合うんですよ。木版手摺りは手でなぞって刷るため、模様に濃淡ができて深みのあるやわらかな風合いになります」 伝統工芸品で飾った部屋に住めるなんて、滅多にできない経験でしょう。
「本物を使ったお部屋に暮らすことで、心が豊かになると思うんです。だから、私たちは賃貸住宅でも本物を使うようにしています」

今回の取材に協力いただいたのは、
Re壁会員の

株式会社 東京松屋

東京都台東区東上野6-1-3 東京松屋UNITY

Tel:03-3842-3785

Fax:03-3842-3820

Mail:showroom@tokyomatsuya.co.jp

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