vol.13
日本の伝統を、モダニズムの中に受け継いでいく壁紙

部屋の一面だけ、色や柄、材質が印象的な壁紙を張るアクセントウォール。近年、人気を集めているインテリアのスタイルです。部屋の一面だけを中心に据えたプランとなります。その施工が行われるというので、現場を見学させてもらいました。

ファッションの街、原宿にあるマンションの一室。窓からたくさん光が入り込む室内には、一面を残し、ほかはすでに白い壁紙(松利デザインオリジナル壁紙・Pm-502)が張られていました。残った一面に張られるのは、市松模様の中に菊の紋が入った壁紙。薄い水色をベースに、藍色や青紫色など全体的に上品な青系でまとめられ、アクセントカラーの黄色が全体を引き締めています。
「市松模様も、菊の紋も、日本の伝統的な柄です。それを、現代という時代、原宿という土地柄に合うようデザインしました」と話してくれたのは、「松利デザイン」の社長伴紀子さん。リリカラのkioiシリーズのインクジェット壁紙をベースに、この部屋に合わせて松利デザイン指示により、サイズや色をオリジナルに変えたそうです。「このデザインの特徴であり見所ですが、細かくて四角い柄は張るのがとても難しいのです」と伴社長は続けます。
「人間の目は、水平と垂直に厳しいので、少しでも曲がっていたらわかってしまいます。また、柄が細かいとずれが目立ちます。この壁紙はとても神経を使うデザインなのです。2、3mmはおろか、1mmずれただけでもダメ。私たちの仕事は、1mmが勝負の世界なのです」

柄の割り付けにも気を使うと言います。
「今回の壁は、金属の枠が付いている左端が一番、目に付きます。ですから、ここで柄が中途半端に切れてしまうのは避けたいわけです。そのため、一般的に壁紙は右から左へ張っていくことが多いのですが、今回は左端に柄の始まりを合わせ、左から右へ張っていくことにしました」
壁紙を壁に合わせては垂直を綿密に確認し、一枚ずつ張り進めていきます。左から壁紙を張っていくという慣れない作業に、施工者たちもより慎重になっているのが伝わってくるようです。

Before

After
(施工担当“チーム池袋松屋”)

一面を張り終えると、白一色だった殺風景な部屋が、一気に華やぎました。描かれているのは、日本で古くから親しまれてきた伝統柄なのに、とてもモダンな印象になっています。
「情緒がありますよね。日本の伝統を残しながら、近代的なモダニズムに仕立て上げるのは、松利デザインの得意分野なのです。室町時代の南蛮貿易で中央アジアや唐から様々な柄が入って刺激を受けましたが、早い時期から、日本人の美意識に作り変えられました。日本人にとっては情緒と美意識、人間と自然環境、との調和がとても大事な物作りの思想で、300年以上続く池袋松屋の伝統理念であり、松利デザインに受け継がれて、今回の壁紙のような美しいものを仕上げることができるのです」

松利デザイン ギャラリー(東京・京橋)

松利デザイン MATSURI MRD-701
(素材提供 リリカラ kioi シリーズ)

そもそも松利デザインは、内装材を扱う老舗池袋松屋の、企画製造・デザイン部門・工事部門が独立したグループ会社。オリジナルデザインや総合的な空間作りを求められることが増えたため、1979年に設立されました。
「私たち池袋松屋グループは思想を同じくする人たち、業界の人たちを大切に思っています。利益・コストや効率を考えることは大事ですが、その前にどういう思いでこの建物を建てるのかということ。健全で美しい空間を仕上げるということ。それを共有できるかどうかを大切にしています。そうでないと、“善いもの”ができないのですよね。お互いが持ち合う信頼関係が、確実に“善いもの”を作るのです。私たち家業グループはこの伝統を守っています。グローバルマーケット、ナショナルマーケット、ローカルマーケットという三重構造の中で、ローカルも含めたナショナル(国内)マーケットを支えるために存在価値があると信じて、これからも努力邁進していきたいです」
そう語る伴社長の目指すところとは?
「今日本で主流はビニール壁紙ですが、紙の壁紙の良さをも広めることですね。和紙というのは、かつて日本の産業を支えた歴史的背景からの文化です。それは日本の自然環境や資源から考えると必然的なことなのです。ですから以前は壁紙にも和紙がたくさん使われていました。湿度の高い日本の気候においては、障子や襖に見られるように湿気を吸収してくれる紙が居心地のいい空間を作ってくれるのですよ。和紙は高くて難しいかもしれませんが、和紙だけでなく現在ではリーズナブルな“紙の壁紙”も作られており、松利デザインでも持っています。日本の風土に紙の壁紙が適材であることをこれからも理解していただけるよう努力します。また施工上でも先輩の方々の培った表装・内装技術の継承保存のために、一生懸命努力し、日本の健全な伝統文化技術を残し、日本社会への貢献を目指します」

今回の取材に協力いただいたのは、

L’art de vivre 毎日を生き生きと
松利デザイン株式会社

東京都中央区京橋1-14-7 池袋松屋 京橋ビル

Tel:03-5250-7814

Fax:03-5250-7815