vol.16
“壁紙ありき”で設計されたショールームとは?

住宅街の一角に現れる、まるでヨーロッパのアパートのようなかわいらしい入り口。扉を開けると、目の前に広がるのは、どこか海外の家に迷い込んだかのような空間――。外からは一見、何のお店かわかりにくいですが、ここは大阪府堺市のインテリアデザインオフィス「MURO」のショールームです。“壁紙ありき”で作られたというこの店舗、一体どういう意味なのでしょう?MUROを経営する岡室憲さん・妙子さんご夫妻にお話を聞いてみました。

MUROのショールームがオープンしたのは2016年7月。内装のほとんどを二人で手がけたため、完成までにはかなりの時間と労力を費やしたそうです。
「壁紙屋さんというと、壁紙を張ったパネルやディスプレイ、サンプルをできるだけたくさん置くのが一般的だと思うのですが、私たちは壁紙を使って、一つのコンセプトに基づいた“部屋”を見せたかったんです。だから、壁紙の種類も必要以上には使っていません。
コンセプトは、昔のキャバレー。完全に私の好みです(笑)。私がコーディネートを考え、主人が施工を担当。“グラマラス”と“クラシック”というキーワードを常に頭の中に置きつつ、主人の職人としての意見も取り入れながら作っていきました」(妙子さん)
「壁紙を選んでから内装を決めていったのですが、メインの壁紙のひし形を上から下まできれいに収めたいというリクエストには悩まされましたね。腰壁風の壁紙もぴったり入るよう計算し、見切りの高さに合わせて、机やパーテーションの高さを決めて……。この部屋は、すべてが壁紙に合わせた寸法になっているんですよ」(憲さん)
あらためて室内を見渡してみると、気持ちがいいほどきっちり壁紙が収まっています。
「完成したときは、自分でも『うわー!きれいにいった!』と興奮しました(笑)。一般的には、部屋の図面ができて、作り付けの家具などいろんなスペックが入り、最後に壁紙を決めます。だから、柄のある壁紙は、どうしても模様が途中で切れてしまうことが多いんですよね。普段はその中で最もきれいに見えるよう割り付けを考えますが、壁紙屋のショールームなので、“壁紙ありき”で作ってみました」(憲さん)

モールディングの腰壁が壁紙というのも驚きですが、外壁も実は壁紙。輸入壁紙を張って、その上からニスを塗っているのだそうです。

フラミンゴが踊っているかのようなトイレも印象的ながら、ひときわ目を引く絵画に見えたものも、壁紙だと言います。
「モールディングで額縁のような四角形を作って、その中に壁紙を張っています。この部分を、1年に4回ほど公開施工で張り替えて、一般の方に見てもらっているんです」(憲さん)

この日も公開施工が行われるというので、見学させてもらいました。今回の壁紙は、Cole&Son(コールアンドサン)社の新作、エキゾチックなARDMORE COLLECTIONシリーズの一枚です。近隣の奥さまや子どもたちが集まり、公開施工がスタートすると、まずはみなさん一様に、このカラフルな柄に驚いていました。壁紙が手際よく張られていくと、子どもたちから「かわいい!」「すごい!こんなんやりたい!」と歓声が上がります。先入観が少ない分、子どものほうが柄ものを受け入れやすいのかもしれません。徐々に大人からも「今の家の壁紙は白いけど、輸入壁紙も素敵やね」といった声が聞こえてきます。

すべて張り終えたところで、参加者に声をかけたところ、公開施工を見るのは2、3回目というリピーターの方が多く見られました。感想を聞いてみると……。
「今回の壁紙は、最初、派手すぎるかなと思ったけど、完成形を見たら“ありやな”と思いました。ビタミンカラーは見てるだけでワクワクしますね。公開施工に参加してから、壁紙一つで本当に気持ちが変わるんだってことを知りました」
「初めて公開施工に参加した時は、壁紙の継ぎ目がないことに、とにかくびっくりしましたね。これまで自分の選択肢に柄の壁紙はなかったけど、今では選択肢に加わっています」
「一般のお客さんは、量産型の白ばっかりのカタログしか見たことのない人がほとんどなんですよ。本当に好きで白い壁紙を選んでいるのならいいんですが、輸入壁紙のようなものの存在を知らずに白を選んでいるんだったら嫌だなと思うんです。だから、一般の方は目にする機会の少ない壁紙を前面に出して、紹介していきたいと思っています」(憲さん)
「お客さんに『家を建てるときに壁紙の種類がこんなにたくさんあるって知ってたらよかったのに』ってよく言われるんです。インテリアというと、カーテンや家具のことをイメージする人が多いですが、その中に壁紙も入れてもらいたくて。MUROでは、家具店の展示スペースの壁紙張り替えも請け負っているのですが、壁紙を変えたらベッドがよく売れるようになったそうです。壁紙一つで家具がよく見えるようになるんですよね。そんなふうに壁紙をインテリアとして楽しむことを広めるため、これからもこのショールームを起点にがんばっていきたいです」(妙子さん)

今回の取材に協力いただいたのは、

株式会社MURO
MUROショールーム

大阪府堺市堺区大浜北町2-4-21

Tel:072-246-9459

Fax:072-246-9469

定休日:水・日曜、その他不定休