File #001

インテリアデザイナーに学ぶ
空間の作り方

インテリアデザイナーに学ぶ空間の作り方

NOBUKO FURUICHI INTERIOR 株式会社
BIID会員
インテリアデザイナー
古市 伸子さん

Livmoreオーナーの古市 伸子さん。 BIID(英国インテリアデザイン協会)日本支部のスタートメンバーでもある。

「インテリアが好き」という人は多いかもしれませんが、「自分の部屋に自信がある人」となるとぐっと減ってしまうかもしれません。

インターネットや量販店で見かけて「かわいい!」と思って買ってきた家具を部屋に置いたら、なぜかしっくりこない。
そんな事はありませんか?  ひとつひとつは魅力的なのに、どうして思い描いていたようなお部屋にならないのでしょう?

おしゃれなラグ、かわいいカーテン、SNSでおすすめされていた家具。
欲しいから買う、では統一性のないお部屋になってしまうかもしれません。

インテリアカフェ「Livmore」。 大阪の中心部を走る道路から程近い通りのビルの1階にある。

  • --インテリアカフェ「Livmore」について教えていただけますか?

    Livmoreを始める前に、インテリアの相談をしたくてもどこで相談できるのか分からない方が多いと聞いたんです。
    インテリアの事で悩んでいる人はこんなに多いのか、と驚いたくらいでした。誰でも入りやすくて、気軽にインテリアの事を相談できる場所を提供したい、と思ったんです。

    --どのような相談ができますか?

    ソファに置くためのクッションのファブリックについてでもいいし、お部屋のワンコーナーでもお家全体のデザインでも、小さなお悩みから本格的なコーディネートのご相談まで、インテリアに関するお悩みならどんなことでもおうかがいしています。

    --どうしてカフェだったのでしょうか?

    コーディネート相談などというと、敷居が高く感じられ、フランクに会話ができないかもしれないから、ゆったりとソファに座り、ドリンクを飲みながらリラックスしてお話しできるように、カフェという形のお店にしたんです。


  • PLOFILE
    古市 伸子 さん
    Nobuko Furuichi

    2011年にNOBUKO FURUICHI INTERIOR 株式会社を設立させて以来、住宅インテリアを主に数多くの物件(1000件以上)を手がけてきた。
    そして、設立と共にハイエンドのクライアントを多く持ち、領事館関連や外国人住宅などにも携わるなど海外インテリアを得意とする。
    2009年にはこれらの実績により、英国で最高峰のインテリアデザイン協会BIID(British Institute of Interior Design)日本初のメンバーとして認められ、インテリアデザイナーとして高く評価される。

事務所とカフェスペースが併設されている。一見、作業場風の手前側がカフェスペース。雰囲気も併せて楽しみたい。

--メニューがとても個性的ですね。

店内の壁いっぱいに、当店でご用意しているインテリアのメニューを描いています。
"シェフのおすすめコーディネート"や"フローリングサンド"など、まるでカフェにあるメニューのような雰囲気なので、内容を想像しながらネーミングでも楽しんでもらえたらと思います。

--お店は普段使いもできるとおうかがいしました。

1時間200円(1ドリンク付)でカフェとしてお使いいただけます。店内にあるインテリア系の雑誌、洋書も全て自由に手に取っていただけます。集中したいときやゆっくりしたい時など、お気軽にご利用ください。


  • スタッフさんも全員がインテリアのプロ。


  • 店内の専門書や洋書も読み放題。


  • 黒板に描かれたカフェ風メニュー。

--スタッフの方も資格をお持ちだそうですが、インテリアデザイナーさんは、どのようなお仕事をされるのですか?

海外では一般的な職業なんです。
日本ではそれほど浸透していませんが、インテリアデザイナーはインテリアを用いて室内空間をトータルでデザインします。

空気感を大切に、コンセプトをしっかり作ったうえで、床も窓も壁も照明も無駄なく選び、家族構成、ライフスタイルやお客様の趣味嗜好、行動スケジュール、理想のライフスタイル、ご自身では気づかない深層心理までを分析し、間取りからデコレーションの細かなところまで全てにこだわったインテリア空間を実現させるためのご提案をいたします。

そこで暮らしていく人たちと「これから、どんな空間で暮らしていきたいか」というイメージを共有し、家を建てる時から生き方まで寄り添う。
それがインテリアデザインの考え方であり、インテリアデザイナーとしての仕事です。

カフェに来店された方は、無料でインテリア相談のアドバイスが受けられる。

--高い専門知識が求められますね。

私たちがプロとして専門性を高めた情報を提供していかなければインテリアデザインの普及は望めません。
お客様にプロである必要性を感じてもらえなければお金を払う価値は生まれませんし、専門性を持った人材には正当な対価が支払われます。

日本のインテリア業界は、まだまだ伸び代のある業界だと思っています。壁も床も照明も、インテリアはどれか一つが突出していても停滞していてもトータルコーディネートは成り立ちません。
同じ業界の人が同じ方向を向いて、一緒になって業界全体を膨らませる。
インテリアを選ぶ側と提供していく側、業界に関わる人たちと共に成長し、文化を創っていきたいと考えます。

  • --文化を創っていくというのはどういうことでしょうか?

    「インテリアは人の心や暮らしに深く関わる素晴らしいもの」と感じていましたが、日本の業界では生産者主体で、インテリアの素晴らしさはなかなか理解されませんでした。
    そんな時、英国インテリアデザイン協会(BIID)に入って初めて歴史の大切さを知りました。
    時代を背景にしたトレンドが今を作り、それが歴史となっています。

    模倣ではなく日本の伝統や文化を尊重し、インテリアデザイン業界を築き、豊かな暮らしを広めていくこと。それによって身近にインテリアを感じ、暮らしに取り入れ、一般ユーザーと専門家がお互いに高め合っていくのが理想です。

店内には見本帳や、シーズンが終わった生地見本のリプロダクト商品がディスプレイされている。

--そんな考え方に共感された企業様も多いとお伺いしました。

カフェでのインテリア相談だけでなく、考えにご賛同いただいたパナソニックさんと共同で梅田のグランフロントにある「猫カフェ in わが家」でも定期的に20分ほどのプチインテリアセミナーを行っています。
企業が手をかけ、ユーザーと共に文化を創るといういい例になればいいですね。

自らがデザインを手掛けられた猫と暮らせる家をテーマにしたショールーム 「猫カフェ in わが家」。(大阪グランフロント南館 パナソニックセンター大阪)

--最後に、古市さんからインテリアに悩む皆さんへ、メッセージをお願いします。

お店に訪れていただいたお客様には「どうなりたいの?」と、うかがうようにしています。インテリアは、「どんな部屋を作りたいか」ではなく、「どんな暮らしがしたいか」をイメージすることから始まります。目的、目標が決まれば自ずと選ぶヒントが見えてきます。

家を買うことがゴールではありません。自分を見つめ直すことがインテリアコンセプトとなり、それがスタートとなります。
家具、カーテン、照明、そして壁。一番大きな面積を占める壁の役割はとても大きいと思います。
それぞれが調和してトータルコーディネートが完成します。パーツにとらわれるのではなく、生き方に根差したインテリアを選んでください。

  • 今回おじゃましたのは...

    ひと部屋からインテリアの相談ができるカフェ
    Interior Cafe Livmore

    ACCESS
    〒550-0003 大阪市西区京町堀1-8-31 安田ビル1F
    TEL:06-6131-5558 FAX:06-6131-5854
    営業時間 / 月~土: 10:00 AM – 6:00 PM

- BACK NUMBER -

NEW!
  • File No.004 2019.2.4 UP
  • 一般社団法人 日本インテリアコーディネーター協会 会長 林 柳江 さん
    これからの壁紙に求められるものは「質感」と「風合い」
    インテリアコーディネーターの草分けとして、常にトップを走ってきた林柳江さん。
    これからの壁紙には「質感」と「風合い」が求められるとのこと。林さんが思う壁紙の未来とは。

  • File No.003 2019.2.1 UP
  • キミイロプロジェクト代表 豊田 泰隆 さん
    壁紙が自由に選べる賃貸マンション
    どうして「壁紙」だったのでしょうか。入居者様と管理会社との新しい関係性を築きたい、と始められたプロジェクトに込められた思いとは―。

  • File No.001 2018.12.28 UP
  • インテリアデザイナー 古市 伸子 さん
    インテリアデザイナーに学ぶ空間の作り方
    自らが経営されるインテリア相談のできるインテリアカフェのお話や、「ただ可愛いから買ってみた」から脱却できるインテリアの選び方について。