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壁紙が自由に選べる
賃貸マンション

壁紙が自由に選べる賃貸マンション

キミイロプロジェクト 代表
KOTOYAグループ 代表
豊田 泰隆さん

グループで経営されているお店の一室でお話を伺った。この部屋にもこだわりのある壁紙が張られている。

駅からの近さだったり、間取りだったり、家賃だったり。皆様が、賃貸で部屋を選ぶ決め手とするポイントはどこでしょう?
物件の“ウリ”はそれぞれかもしれませんが、“入居時に部屋の壁紙を自由に選べる”ことを謳っている賃貸マンションがあります。

どうして「壁紙」だったのでしょうか。
入居者の方と管理会社との新しい関係性を築きたい、と始められたプロジェクトに込められた思いとは。
賃貸マンションの新しい形を提案する「キミイロ」プロジェクト。プロジェクト代表である豊田 泰隆さんにお話をうかがいました。

  • --「キミイロ」プロジェクトについて教えてください。

    入居者様が「壁紙を自由に選択し、壁紙から始まるコーディネートを楽しむことができる」というコンセプトのもと、 賃貸でも自分で部屋を作ることができる、そしてその部屋に愛着を持ってもらいたい、という思いを込めてスタートしたプロジェクトです。

    --実際に壁紙を張替えられた入居者様の声を教えていただけますか。

    壁紙を選べることをご存知で入居された方はこだわって選ばれますね。
    最初は選択肢がありすぎて、どこから手を付けていいのか分からなくなってしまう入居者様もいらっしゃいますが、統一したイメージや部屋ごとにテーマを決めて楽しんで選んでいただけていると思います。

    お部屋ではおとなしめの壁紙を選ばれた方でも、洗面所やトイレ、ウォークインクローゼットや洗濯パンなど比較的小さな面積の箇所で遊んでいただく事もあります。
    中には、トイレですが全部の面で違う色の壁紙を選ばれた方もいらっしゃいます。
    一番冒険する方が多いのはクローゼットですね。「やり過ぎた!と思っても閉めてしまえば分かりませんから!」とお勧めしています(笑)


  • PLOFILE
    KOTOYAグループ
    KOTOYA GROUP

    1950年創業。不動産を中心とした多角的企業グループ。
    1983年に不動産仲介業を開始、三代目豊田泰隆氏に代替わりしたのを契機に管理業にも本腰を入れはじめ、家主業・仲介業・管理業を三本の軸に不動産事業を展開。
    現在では、エンドユーザーとの接点や広く関わりある人との交流の場所として、飲食業経営をはじめとし、障がい者就労作業所経営、 大阪産(もん)認可を得た大阪の中心地で育つしいたけ「よろしい茸」栽培など、地域に根差した多角事業体へと進化を続けている。


  • 小さなスペースだからこそ、大胆な柄の壁紙にも挑戦できる。


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--プロジェクトを立ち上げるきっかけがあったのですか?

少し暗い話になりますが、きっかけは10年近く前に大阪市内のマンションで起こってしまった痛ましい事件を耳にした時でした。
その事件後にはマンションから多くの退去者が出たと聞きます。しかし同時に、残った人たちはコミュニティを結成し、もう二度と同じことを繰り返さないように入居者同士のつながりを持とうと考えられたそうです。
同業者として、大変もどかしい思いをしました。管理会社として何かできなかったのか、何がしていけるのか。「キミイロ」プロジェクトを形にしたいと思ったのはそんな時でした。

--入居者の方達とコミュニケーションを取りたい、と。

昔のアパートのような古き良き時代の住まいを目指そうかとも思いましたが、現代の風潮にはそぐわない。逆に入居者様から敬遠されてしまう恐れもある。
そもそも、管理会社自体が入居者様のことを知らないのに、入居者同士が仲良くなってください、ではおこがましいですよね。

私たちが入居者様と顔を合わせる機会があるのは入居の際の手続き時のみで、その後に連絡がくると言えばトラブルが起きた時だけで、事前の相談レベルでは来てもらえないんです。
だから入居前に壁紙を選んだり、施工の打ち合わせなどで何度もお客様と顔を合わせて顔見知りになれて、もっとお客様と私たちが良好な関係が築けていたら、少しは違ってくるのではないかと思ったんです。

目移りしてしまう壁紙の見本帳も数多くそろえています。

--最初から「壁紙が選べるマンション」だったのでしょうか?

実は、企画段階では壁紙が選べるのではなく、スケルトンの状態から入居者様に自由に部屋をレイアウトしてもらえたら面白いんじゃないかと考えていました。
入居者様には賃貸物件の不自由さをクリアにしてもらい、私たちは入居者様とできるだけたくさんのコミュニケーションを取ることで、良質な関係を築いていけるのではないか、と考えた訳です。

しかし、残念ながら法令でクリアできない点が多くあり、認可が下りなかったため断念したという経緯があります。
デザイナーと話し合った結果、部屋の中でも大きな面積を占める壁紙なら喜んでいただけるのではないかという結論に至り、プロジェクトが発足しました。

--今後、入居者様とはどのような関係性を持ちたいと思ってらっしゃいますか?

元々は、マンションの中でコミュニティを作ってもらいたい、という思いから始まったプロジェクトですが、今ではそれに加えて、自分が過ごした部屋に愛着を持ってもらって、退去する時には部屋で過ごした日々を思い出してもらえたらと思っています。
できれば壁紙なんかがきっかけで、入居が1年、2年と延びてくれたら、それはうれしいことですね。
いずれは話題になったカスタムメイド賃貸などを見習って、様々なニーズにも応えていくことができたら、とも考えています。

--家主様との関係性も大切になってきますね。

家主側もサービス業なんです。大阪ではインバウンド旅行客が強く、入居のあてが分からない賃貸業よりも民泊に力を入れる家主さんも増えてきました。
マンション管理業の私たちが新しい企画を立ち上げて情報発信していくことが大事だと感じています。業界内もBtoCを意識し始めているんですよね。情報共有し、ボトムアップしていけたらいいですね。

  • 今回お話をおうかがいしたのは...

    壁紙が選べる賃貸マンション
    キミイロ プロジェクト

    【運営会社】
    株式会社 KOTOYA
    大阪府知事(7)第41013号
    〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1-8-3 林四ツ橋ビル801
    TEL:06-6541-5108 FAX:06-6541-5109

    株式会社 e-建物管理
    〒550-0013 大阪府大阪市西区新町1-8-3 林四ツ橋ビル801
    TEL:06-6541-5110 FAX:06-6541-5111

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    これからの壁紙には「質感」と「風合い」が求められるとのこと。林さんが思う壁紙の未来とは。

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