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File #08

レトロな空気感を大切にした心地よいお店で、おいしい「おうちごはん」を。

レトロな空気感を大切にした心地よいお店で、おいしい「おうちごはん」を。

長屋ダイニング 愛逢
田井中 みゆきさん

Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

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舗装されていない土の小径、煤けた土壁に木戸、そして瓦屋根。まるで昭和初期にタイムスリップしたかのような路地の一角に、そのお店はあります。お店の名前は「長屋ダイニング 愛逢」。
昔懐かしい長屋の風情はそのままに、壁、床、天井などを大幅にリフォームしてオープンにこぎつけたのは4年前のこと。今では居心地のよい店内と毎日通いたくなる日替わりの家庭料理が評判を呼び、ご近所はもとより遠方から足を運ぶお客さんもいらっしゃるそうです。
もともと建築に興味があったというオーナーの田井中みゆきさんにお店を始めた経緯や思い、改築した際のこだわりなどをおうかがいしました。

  • --以前から古いお家に興味をお持ちだったのでしょうか?

    今から10年ほど前になりますが、近所で古い家がどんどん壊されていくのを見て常々もったいないと思っていたんです。住宅としてまだまだ利用できるのに、なんとかできないかな、と。
    もともと建築が好きで不動産投資にも興味を持っていたので「だったら自分で買って、そこをリフォームして借家にしよう」と思いついたんです。


    --きっかけは不動産投資だったんですね。

    最初に人に貸したのもここと同じような長屋の1棟をリフォームした物件でした。
    そこを借りていた人が、2階は住居で、1階をちょっとした料理屋さんにされていたのを見て、自分でもお店ができるんじゃないかと考えたんです。

     

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢
    PROFILE
    田井中 みゆき さん

    鳥取県出身。短大進学を機に大阪へ。卒業後は大阪市内のデザインプロダクションにコピーライターとして勤務。結婚後は家事・育児の傍ら様々な仕事を経験し、4年前に長屋ダイニング愛逢をオープン。
    勤務先で知り合ったご主人の良一さんはグラフィックデザイナー。今は本業と並行して、奥様のお店を手伝う日々。

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レトロな雰囲気あふれる店内。

 

--なるほど、それでこのお店を?

今、ひとり暮らしをされてる方って多いじゃないですか。お年寄りの方はもちろんですけど、独身という方もこの近辺でもとても多いんです。そういう方って普段の食事はコンビニ弁当やスーパーのお惣菜で済ませてしまいがちになると思うんです。
だから、せめて週に一度はきちんとした手作りのごはんを食べてほしいなって。そんな思いもあって、食べ物屋さんをやろうと決めました。


--この長屋を選んだ決め手はあったのでしょうか?

お店にできるような古い家をあちこち探したものの、なかなか条件に合う物件に出合えませんでした。諦めかけた時に、偶然、この長屋が売りに出されているのを見つけたんです。
何と言っても自宅のすぐそばで、家の前の道が未だに舗装されていない土の道というのも気に入りました。

  • 洗面所に使用されているボウルや蛇口にも懐かしい雰囲気が。

  • 窓からは中庭が見える。

--かなり古い建物とおうかがいしました。

昭和初期に建てられたそうなので、90年近く経つんじゃないでしょうか。
もちろん購入した時点でガタがきているところもありましたが、天井や壁を剥いでみても梁も柱も十分しっかりしていてとても丈夫。もともとの建材が良かったんでしょうね。


--改装される際にこだわった点は?

まずは建物そのものの強度を上げることでした。 壁や天井、床もすべて取り壊して、床はコンクリートのベタ打ちにして隣家との境になる壁には通常のボードのほかにゴム材も入れました。
もともとの壁は5cm程度だったんですが、10cmくらいに厚くして耐震性だけでなく防音の面にも気を使って補強してもらいました。

Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

 

--内装でこだわった点はありますか。

近所に古民家を改装したお蕎麦屋さんとカフェがあるんですが、ずっとこんなお店がいいなと思っていました。せっかく昭和初期の長屋をベースにするのですから、この古さを建物の“味”として残したかったんです。
一から造り変えて綺麗な新築風にするより、古い造りや雰囲気をできるだけ生かした店内にしたい、とその点を強く念押ししてリフォームをお願いしました。


--1階と2階、どちらも一見塗り壁のようですが、実は壁紙だそうですね。

私も最初は壁紙だと知らなくて、業者の方から壁紙を張ったのだと聞いて驚きました。
継ぎ目も全く見えないし、言われないと壁紙だとは思いませんよね。今は色々な壁紙があるんだなと思いました。
壁紙は業者さんに選んでいただいたのですが、1階は木の床に合う漆喰風の壁紙で、2階は畳敷きの和室に合う土壁風の壁紙。どちらも真っ白ではないので温かみやレトロ感もあって、それぞれ室内にマッチしていて気に入っています。

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

    昭和の家を思いださせる店内2階。

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

    一見、塗り壁にも見える壁紙が選ばれた。

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

  • --壁紙と相まって、家具もアンティークなもののようですが。

    ちょうどここの改装をしている時、主人が学生時代にアルバイトしていた喫茶店が閉店するという話を聞きました。ならば、とカウンターや椅子をもらい受けたんです。これも50年近く経つ年代物だからこの店にピッタリでしょう。
    天井から吊っている照明や壁のハンガー掛けは、実は近くの住吉公園の木の枝なんです。台風で倒れたのをもらってきて、ペンキを塗って取り付けました。

--オーナーとしてのモットーは?

うちは取り立てて高価な食材を使っているとか特別な調理法をしているとか、そういう特色はありませんが、できるだけ旬の食材でどこの家庭にもあるもので作る、それが基本。
でも、ご飯は玄米からその都度精米していますし、お味噌汁もお出汁から作っています。外食なんだけど家庭で食べているような安心感やおいしさがある、いわゆる「おうちごはん」を出す。それがモットーですね。

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

    本日のおうちごはん。

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

    どのメニューも品数の多い家庭料理。

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

    身体に優しいメニューにはファンも多い。

--レトロな雰囲気と手作りの温もりが相まって、居心地のいいお店となっているのですね。

この4月でオープンから丸4年。お店を始めた当初はご近所の方たちが気軽に寄ってくれるお店を想定していたんですが、口コミやネットの情報で少しずつ広まっていって、今では遠方からわざわざ電車でやって来てくださる方もいらっしゃいます。
かと思えば、すぐ近くに住んでいるけどここがお店だとは知らなかった、という人もまだまだいらっしゃったりして。

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田井中さんご夫妻。

 

--これからお店を続けていく中で、壁紙や空間の設えについてお考えがあればお聞かせください。



今の壁紙が気に入っているので、もし内装を変えるとしてもこういうテイストのものにしたいですね。流行とかお洒落さとかはないけれど、古い佇まいでほっとできる空間と家庭の味をこれからもずっと提供していけたらいいなと思っています。

  • Re壁ボイス 長屋ダイニング 愛逢

  • 今回おじゃましたのは...

    昭和初期にタイムスリップしたような路地にあるごはんやさん
    長屋ダイニング 愛逢

    ACCESS
    〒558-0043 大阪市住吉区墨江3-15-13
    Tel:090-1156-1137
    営業日時:火曜〜土曜、午後6時〜9時

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