秋山千惠美さんは20代で始めたフラワーアレンジメントのお仕事から、背景の重要性に気づき、壁を彩るペイントに着目。
海外からペイントを輸入して販売する「カラーワークス」を設立し、オリジナルブランドのペイント「Hip」を開発。
安心・安全で豊富なカラーバリエーションなことと、可愛いパッケージからグットデザイン賞を受賞しています。
また、自己の成長やライフスタイルの充実を考えている人々が「色の力」を理解し、それぞれのフィールドで活躍できる人材を育成・創出・普及することを目的として「日本カラーマイスター協会」を設立。
様々な取り組みを通して、秋山さんが考える「色」の想いをお伺いしました。
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--日本カラーマイスター協会ではどのような取り組みを行っているのですか?
日本カラーマイスター協会は自己の成長やライフスタイルの充実を考えている方々が、さまざまなフィールドで実践できる「色の基本知識」や「色の力」を理解するライフカラーリストを育成・創出・普及する活動を行っています。
協会の講座ではいろいろな業種の人たちが、同じグループで一緒にワークショップの課題に取り組む場面があります。
違う立場の人たちと交流することで、色を通して色が人に役立ち、生活を豊かにしてくれることを学んでいただくコミュニケーションスキルが、自然と身に付く素晴らしい場です。
当協会では経験豊かな講師陣が、こうした場作りやコミュニケーションをしっかりサポートしています。
また、一般社団法人日本カラーマイスター協会の資格である「ライフカラースタイリスト」取得の講座は、毎月多くの方に卒業していただいております。
企業の社員教育のためのセミナーも開催しており、色の大切さや色の持つ意味などをお話することで、企業ブランドの重要性をお伝えしています。
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PROFILE
秋山千惠美
一般社団法人日本カラーマイスター協会 代表理事
株式会社カラーワークス 副社長。アメリカやイギリスなどからペイントと壁紙を輸入販売するカラーワークスを1998年に設立。その後、オリジナルブランドのペイント「Hip」も展開。また、色のことを知れば生活は豊かになるとの想いから、協会を設立。色のエキスパートとして活躍している。
--協会では講座による活動を行っているのですね。
「色を使える人になる」をテーマにまずは一回から受講できる「ライフカラースタイリスト講座」の講座を通して、色に対する理解を深めて頂きます。
そこから内容にあう講座を受けて頂ける様にしています。
色はとても重要なのに、今まで学ぶということはありませんでした。
でも、学べば豊かに表現することができます。
私たちは色についてちょっと勉強してもらい、自分達の生活を豊かにして頂くことを推奨して行きたいと考えています。
「どんな色にすれば良いのだろう」と悩んでいる方は多くいます。
「寝室をこの色にしたらおかしくないですか?」と相談されたこともあります。
寝室を他人に見せることはほとんどないでしょうから、どんな色にしても良いと思うんです。
でも、人は意見が欲しいんです。
お客様に寄り添って、色についてお客様から安心して相談して頂ける存在でありたい、そして色を知り、色の楽しさをたくさんの方々に伝えて頂きたいと思って設立したのが「日本カラーマイスター協会」なんです。
日本カラーマイスター協会は学ぶ事を目的としています。
色に関わるを講座を通して学んでいただき、生活を豊かにして頂ければと考えています。
--協会では講座以外には具体的どの様な活動をされているのでしょうか?
協会内の事業としては講座も含めて
「アカデミー事業」
「カラーマーケティング事業」
「カラーブランディング事業」
「サークル活動」
など先に述べた、それぞれのフィールドで活躍できる人材を育成、創出、普及することを目的としています。
活動としては、
1. 講座の開催と運営、外部講師を招いたイベント、受講生の人的交流、情報の発信など
2. 検定試験の実施と認定
3. 認定講師養成講座の実施と認定
4. 公式教材や商材の開発、販売及び提供
5. 企業の人材育成、カラーブランディング
を行い色を活用し、アイデンティティを見つける道標にしてもらいたいのです。
色を見る目を育て、色が持つ意味を知り、色の記憶を探っていってもらいたい。
身の回りにある色を少し意識するだけで、暮らしの質は上がります。色のある人生はもっと豊かになるでしょう。
--「日本カラーマイスター協会」と並行して運営されている「カラーワークス」ではどの様な活動をされているのですか?
日本でも欧米のように、生活に色があることが重要と思い、アメリカとイギリスからペイントと壁紙を輸入販売する「カラーワークス」を1998年に設立しました。
イギリスの「FARROW&BALL(ファロー&ボール)」というとても素敵なペンキのメーカーがあって、コンタクトを取ったら「2000万円分買ってくれたら日本の代理店になってもいい」という返事。
当時はお金はありませんでしたが、若かったので理由もなく「売れるに違いない」と信じ、飛びつきました。でも、これが売れない、売れない(笑)。
そんな売れない時代が15年も続きました。というのは、日本では壁紙を張るのが普通でペンキを塗るということがなかったからです。
靴を履かない人に、靴を売りに行くようなものでした。
--そのFARROW&BALLのことはどうやって知ったのですか?
アメリカのトレードショーで知りました。
その後、FAXで色見本を貰ったりしているうちに、「一度、会社に来てください」と連絡がありました。
会うと「あなたに代理店を任せるためには、我々の歴史と色の意味を知ってもらわなければならない。」
「大事なのはペンキを売ることではなく、ブランドを守ることです」と言われました。
FARROW&BALLでは色にさまざまな名前や意味があり、歴史的背景があるんです。
「これをわかってくれる人に伝えていくことが、私の仕事だ」と感じました。
それをお客様に言うと「素敵ね」となるのですが、「やっぱり、壁紙にします」となるんです(笑)。
私たちはアメリカやヨーロッパの家具に憧れたりするのに、壁だけは別なのが不思議でしかたありませんでした。
--オリジナルのペイントも展開されていますね。
はい。「Hip(ヒップ)」というブランドです。2003年からスタートさせました。
「ハイクラスなインテリアペイント」という意味もあり、揮発性有機化合物(VOC)をほとんど含まない安心・安全な塗料です。
また、カラーは全1488色と豊富に揃えています。
安全性・豊富なカラーバリエーション・使いかけの缶にすら愛着を感じるデザインなどから2004年度にグッドデザイン賞を受賞しました。
--業界の方は何を求めているとお考えですか?
業界の方は、ユーザーの色に対するニーズをキャッチしたいと考えています。
今までは「安ければ良い」という時代でした。
でも、今では値段だけではなくなってきています。
例えば、住宅は「駅から徒歩何分」とか「何平米」が重要だったのに、ガーデンリビングのある家や、キッチンから子どもたちの勉強机が見える「間取り」が大切と意識が変わってきています。
壁も同様に、同じ間取りでも色を変えることで、印象は変わってくるんです。
洋服でも寒いからカーディガンが欲しいというのではなく、綺麗に見られたいとか若く見られたいという基準で選びますよね。
壁も同じです。そんな意識に変わってきました。
--一般の方の需要はどの様な傾向にありますか?
「部屋をリノベーションする」という方が多いですね。
暮らしを大切にされている方が多いと感じますし、若いご夫婦もいます。
最初はベッドルームだけを塗るつもりだったのに、家全体になったという方とかも。
自分達や子どもと一緒になって塗る人もいます。子どもが触っても安全なペンキなんです。
Hipは1缶4,500円前後ですが、1缶で6畳の部屋の一面は塗れます。
子どもが好きな色を塗ると、子どもの記憶に残って、大きくなったとき「部屋は青い壁だったな」と思い返せると思うんです。
カラーワークスでは塗料を売っていますが、空間に色を付ける文化を大切にしたいと考えています。
私たちのショールームには、日本カラーマイスター協会で色のことを学んだスタッフがペイントのことはもちろん、色のことも相談に乗ることができます。
--壁紙についてはどのようにお考えですか?
日本は豊かになって、ブランド品を持っているのが普通になってきました。
反対にブランド品を持っていなくとも、誰もが生活を豊かにしたいと考えています。
今では中古物件をリフォームして、愛着を持って長く住むといったライフスタイルに変化しています。
ですので、ちょっとした贅沢をするのなら、壁にもこだわって良いんじゃないでしょうか。
壁も一生ものとは思わないで、10年ごとに変えて行くようになるといいと思います。
--壁紙も販売されているんですよね。
はい。カラーワークスでは壁紙も販売しています。
FARROW&BALLのペンキを使って、シルク印刷のように版で押したハンドメイトの壁紙です。
色がシックで上品ですので日本の住宅と相性がいいんです。
壁紙で色を変えるというのは、手の届く範囲の贅沢だと考えています。気持ちが豊かになることが大切です。
いきなり豪華なことをやらなくていいから、トイレだけとか玄関だけとか、少しずつ自分らしく豊かになって行けばいいと思います。
また壁紙は総て同じでなくとも、あるところは手軽に、あるところは豪華な使い分けても良いのではないでしょうか。
自分で好きなようなチョイスすることが大切だと思います。
色が持っている情報をかみ砕くことは、生活の中にとても重要なことです。
また、企業においても色を考えることがとても大切です。
色が持っている情報というのは、黄色は元気がいいとか。色にはそれぞれ情報があります。
人が視覚で得る情報87%と言われ、さらに色の情報が約90%を占めていると言われています。
私たちは、色やイメージなどのビジュアルから受ける印象で大部分を判断しています。
色は暮らしに欠かせない究極のコミュニケーションなのです。
--協会では色を活かす「カラーコミュニケーション」の理念がありますが、具体的にはどの様な考え方ですか?
現代のライフスタイルにおけるあらゆるシーンを想像してみると、コアになるいくつかのフィールドが浮かび上がってきます。
環境・美・衣・食・住・医療・心・学。
これら8つのフィールドは人や社会と深いつながりがあり、カラーコミュニケーションを通じてさらにさまざまなフィールドへと複雑に連鎖していきます。
今後のライフスタイルの変化によって、その連鎖は新たなフィールドへとどんどん広がっていくでしょう。
色そのものを知るだけでなく、8つのフィールドにおいて色がどのような目的を持って使われているのかを考えること。
そして、色が人の心や暮らしにどのように作用しているのかを知ることは、色の力を学ぶ上での基本となります。
この基本をしっかりと身に付ければ、未来の自分の価値を高めることにも、社会全体をより良い方向へと変えていくことにも役立てられるでしょう。
--最後に「色」についてどの様にお考えでしょうか。
色は言語を使わずにさまざまな情報を持っていて、メッセージを伝えるシンプルで魅力的なコミュニケーションツールです。
2020年12月には色の仕組みや機能、人への影響力をはじめての人にもわかりやすく解説した「カラーデザインの教科書」もカラーマイスター協会より発売しました。
色はその人の感情も面白いほど正直に表します。
いうなれば色そのものが生命力であり、私たちは色で心の変化を感じ、色を通して目に見えるものとも見えないものとも対話をしています。
色は人の心と身体にとって重要なファクター。
その力をライフスタイル全般に役立てることこそが、色を学ぶ最大の目的といえるでしょう。
ただ色の知識を身に付けてもらいたいわけではありません。
自分を元気にするために色を活用し、アイデンティティを見つける道標にしてもらいたいのです。
そのために、色を見る目を育て、色が持つ意味を知り、色の記憶を探っていってもらいたいと思います。
身の回りにある色を少し意識するだけで、暮らしの質は上がります。
色のある人生はもっと豊かになるでしょう。